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福岡高等裁判所 昭和36年(ラ)220号 決定 1961年10月21日

旭相互銀行

理由

競売法による抵当権の実行としてなされる不動産競売手続にも、民事訴訟法第五五〇条第四号が準用されるものと解すべきところ、相手方銀行からはもちろん、抗告人からも同条同号後段の「債権者が義務履行の猶予を承諾した旨を記載したる証言」の提出がなく、所論のとおり競売申立人たる相手方銀行が債務者である抗告人に対する本件抵当権を金七〇万円に打ち切り減額した上、昭和三六年九月末日までその弁済を猶予したということについてはなんらの証拠がない。また、たとえ、右三六年九月末日まで弁済の猶予がなされたとしても、その猶予の期間中競売期日が開かれて最高価競買人が不動産の競買を申し出で、同人に対し原審が競落許可決定を言い渡し、これに対する抗告があつて事件が抗告審に係属中、前示猶予された弁済期が経過した場合は、かりに原審の競売手続及び競落許可決定は違法であるにしても、その違法のかしは治癒され抗告裁判所としては原審の競落許可決定を維持するの外はないので、すでに右弁済期経過後の昭和三六年一〇月二一日本決定をなす当裁判所から見れば、弁済の猶予を得たという所論は採用のかぎりでない。以上いずれの点から見ても所論は理由がない。その他原決定にはこれを取り消すべき違法は存しない。

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